What’s BOKATOR?

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人間が自然の中で生きていくための手段

ボックは「激しくたたく」、タオは「ライオン」を意味し、ボッカタオは「ライオンを激しくたたく」を意味します。名前の由来は2000年前にライオンが人々の村を襲った時、ある武人が膝の技でライオンを倒したという伝説に由来するといいます。
ボッカタオには竹を尖らせたような武器を使う技があります。その武器を肘に付けて、肘打ちのようにして竹で相手の首を刺します。

これは人間が自然の中で暮らす中で、野生の動物から身を守るために必要であった武器であったようで、カンボジアの遺跡などにはボッカタオを使って動物と戦う壁画なども残っています。

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古代インドネシア半島を恐怖に陥れたクメールの覇者に愛される

時は流れ802年にクメール民族による現在のカンボジアの元となるアンコール王国が生まれます。

12世紀末、クメールの覇者と呼ばれ、アンコール・トムを建設したことでも有名なジャヤーヴァルマン7世の時代に最盛期を迎え、現在のタイ東北部、ラオス、及びベトナムのそれぞれの一部をも領有していました。

ボッカタオはジャヤーヴァルマン7世によって軍隊に推奨されており、ボッカタオは東南アジアを支配したアンコール王国の強さの源泉と考えられています。

アンコール王国の軍隊は武器がほとんど素手か槍を持っていただけでしたが、接近戦になれば、熟練したボッカタオの使い手たちにより、めっぽう強かったという史実も残っています。

世界遺産アンコール遺跡群にもボッカタオの技が壁画として多く描かれていますので、訪れる際には探してみても面白いのではないのでしょうか。

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この国の栄光と共にするかのように

しかし、クメール王国の衰退と共に、ボッカタオは衰退していく事となりました。
更にその後のフランスによる植民地支配やポル・ポトやクメール・ルージュ時代の弾圧によってボッカタオは一度絶滅します。

ボッカタオがもともとは戦場での戦闘術であったことや、格闘技を習う余裕がある=富裕層、知識層であったことから殺されたなど様々な理由がありますが、内戦当時はボッカタオを習っていることが当局に分かると殺されました。

この失われつつあった伝統武術の復興を試みたのがサン・キムサンです。
『弱くなった自分の祖国カンボジアを見ていられなかった』

キムサン氏はポル・ポト時代にタイに亡命し、その後アメリカ合衆国に渡り、ハプキドーの師範として暮らしていました。しかし彼は長く続いた内戦により経済を始め、弱くなっていたカンボジアという国に伝統を復活させるため、アメリカで0から築いた全てを捨てて、カンボジアに戻ります。

2001年に帰国し、師範を集めて組織を整備し、2005年にそれまで名前が忘れられていたこのカンボジア武術を「ボッカタオ」と名付けました。

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一度途絶えた伝統はボッカタオという伝説に名前を変える

マスターは国内の名人を訪ね歩き指導を請い、支部の立ち上げに奔走する傍らで、普及の為の執筆、プロモーション活動などすべてを一人で行いました。

彼の話によると最も辛かったのは、度重なる内戦とポル・ポトの虐殺の傷が癒えないカンボジアの人にとって、ボッカタオを復活させようという動きは暗黒の歴史を思い出させるものでしかなく、再び当局に殺されることになるかもしれないことを恐れて、『私はボッカタオという格闘技なんて知りません』と全員に断られたことだそうです。

しかし彼は『この国が最も輝いていた時代の歴史を後世に残す義務がある。』という思いから、粘り強く活動を続け、競技人口も増え、国内大会も開催されるまでになりました。

彼はアメリカに亡命しているときにTV番組のディレクターなども務めていた経験も持ち、カンボジアの政府の大臣にも彼のことを兄弟のように慕うほどの人脈を持っています。

その状況を見て、『あなたはなぜビジネスの分野に進まなかったのか?』と聞いた人がいました。

『ビジネスの分野に進出するのはボッカタオをもっと広めてからにしようと考えていたんだけど。私も68歳だからもうその夢は叶わないかもね。』

続けて、『でも自分のやっていることに誇りは持っている。ボッカタオはこの国の歴史だ。だから自分はトップでもCEOでも何でもない、カンボジア人みんなのものだから。
私はただみんなのマスターっていうことだけだよ。』と答えていました。

マスターTV 撮影

写真はTV撮影を受けるマスター。
マスターの活動が実り、現在は10個の州で20個の教室にまで広がり、競技人口は3000人を越え、TVCMにもなっている程に国民にもポピュラーな存在になっています。

彼が追い求めたアンコール王国の美しい残像が静かに蘇りつつあります。

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